水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
「……迷惑、かけたな」
「え?」
「俺がお前に無茶振りをした自覚はあった。滉が反対したのは、正しかった。恩返しの件ももういい。これで相殺《そうさい》してやる」
「で、でも……まだ本番終わってませんよ? それに私、成功できる自信もありません」
「いい。お前は俺の指導にも逃げずに堪えたし、十分頑張った。なあ、滉。お前もそれは認めるよな?」
碧の声が急に大きくなった。梯子《はしご》の下に向けて話し掛けたようで、波音もそちらへ視線を向ける。滉は、そこで二人の会話を聞いていたらしい。
「……明日の本番を見て判断します」
「そうか、分かった」
滉は波音と碧を軽く見上げると、すぐに去って行った。
(明日、成功させれば、滉さんも納得してくれる?)
いくら滉に冷たくされようが、嫌味を言われようが、波音は気にしないように努めていた。だが、副団長である彼にも認めてもらえるチャンスがほしい。
俄然やる気を漲《みなぎ》らせた波音は、終業後も少し練習させてほしいと、碧に頼み込んだ。
「別に構わないが……練習最終日はコンディションを整えるのも大事だぞ?」
「はい。でも、成功率を上げたいんです」
「……それなら、ミーティングの後にもう一度見てやる」
「ありがとうございます!」
波音がにっこりして頭を下げると、碧は真顔になった。それこそ、彼の方が幽霊でも見たかのように。
「え?」
「俺がお前に無茶振りをした自覚はあった。滉が反対したのは、正しかった。恩返しの件ももういい。これで相殺《そうさい》してやる」
「で、でも……まだ本番終わってませんよ? それに私、成功できる自信もありません」
「いい。お前は俺の指導にも逃げずに堪えたし、十分頑張った。なあ、滉。お前もそれは認めるよな?」
碧の声が急に大きくなった。梯子《はしご》の下に向けて話し掛けたようで、波音もそちらへ視線を向ける。滉は、そこで二人の会話を聞いていたらしい。
「……明日の本番を見て判断します」
「そうか、分かった」
滉は波音と碧を軽く見上げると、すぐに去って行った。
(明日、成功させれば、滉さんも納得してくれる?)
いくら滉に冷たくされようが、嫌味を言われようが、波音は気にしないように努めていた。だが、副団長である彼にも認めてもらえるチャンスがほしい。
俄然やる気を漲《みなぎ》らせた波音は、終業後も少し練習させてほしいと、碧に頼み込んだ。
「別に構わないが……練習最終日はコンディションを整えるのも大事だぞ?」
「はい。でも、成功率を上げたいんです」
「……それなら、ミーティングの後にもう一度見てやる」
「ありがとうございます!」
波音がにっこりして頭を下げると、碧は真顔になった。それこそ、彼の方が幽霊でも見たかのように。