Project Novel

へへっと笑って、先輩に駆け寄った。

「いーなー、こんな可愛い年下の彼女とかっ」
「お前なんか受験生の敵だっ!とっとと帰れ帰れ!」

「うっせーよっ」、ははっと笑いながら、先輩は友達に軽く手を振った。
わたしも愛想のいい笑顔で頭を下げる。

従順で、礼儀正しくて、可愛い彼女。

必死だった、わたしは。
誰が見ても、羨ましがられる様な彼女になるために。


「ばいばい」


…聞きたくない声が聞こえた。

わたしは振り向けない。

振り向いて欲しくないのに、先輩は振り向いた。


「おぅ、じゃーな」


わたしの背中の向こうには、きっとあの綺麗な笑顔がある。

スラッと長い手を振って、長い髪を秋風になびかせて、カーディガンに片手を突っ込んで。

見たくなかった。
彼女を見たくなかった。

彼女を見る先輩を、もう二度と見たくなかった。


彼女にだけは、わたしはどうしても"羨ましい彼女"にはなれなかった。



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