Project Novel
くるりと丸い大きな黒目に涙に濡れた長い睫毛。
陶器の様な白い肌は夜の闇に発光する様に見える。

稀に見る美少女だった。
こんな夜にとても似合ってる。

「恋人に…ふられちゃって、」

へへっと泣き笑い。

真夜中だからか、月がぼんやり見下ろしてるからか、こんな夜だからか、彼女は通りすがりのあたしに話し出した。
あたしは側に腰をおろす。

「なんとなく予感はあったんです。だから毎日、部屋で泣いてて。いざふられた時、泣かなくてすむ様に。でも…ダメですね。家で泣きたくなくて、ふらふら寄り道しながら泣き場所探してて、気付いたらこんなとこまで来ちゃってました」

「私、南の方に住んでるんです」、そう言う彼女が今いる場所は、思い切り北の地区。
あたしは苦笑して返事に変えた。

「なんだかなぁ…私の人生、寄り道ばっかです。真っ直ぐ、歩けないんです」

彼女の横顔は、泣いたからかほんのりと赤く染まっていた。
それはさっきの彼女達の様に、生気に満ち溢れていて。

「…人生なんて、寄り道でできてるんだよ」

あたしは言った。

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