Project Novel
足音が、だんだん小さくなっていった。
残されたのは、私と残りのしゃぼんだまだった。
窓の外に浮かぶいくつもの小さなしゃぼんだま。
落ちる前に、私は思わず手を伸ばした。
触ったと感じる暇もない。
音もなく、それは弾けた。
夕焼け色のしゃぼんだま。
いつも自由だと思ってた。
いつも笑ってると思ってた。
何もかもを持ってると思ってた。
でもその人の造り出したしゃぼんだまは、あまりにも儚くて。
笑顔じゃないその人は、あまりにも哀しくて。
残りのしゃぼんだまを、私はそっとふいた。
綺麗に浮かんだと思った瞬間、それは夕焼けに弾けて消えた。
【fin,】
…07.9.28…