Project Novel
嘘じゃないよ。
あなたの隣は居心地がいい。
見上げる角度も好きよ。

でもほんとうは。

ほんとうは、クリスマスなんて嫌い。

だって。



街はざわめく。

幸せな人達で満ち溢れてる。

わたしもあなたも、その中の一部。

そして、彼も。


わたしの足が止まったことに、あなたは気付いた。
いつも歩幅を合わせるから、だからあなたも止まる。

視線の先を辿られない様に、急いで目を伏せた。


でもあなたなら、きっとわかってる。

わたしの視線の先。

幸せな人達の中の一部の、彼と、あの子を。


「…どうした?」

あなたは聞く。
優しい声。

わたしは顔を上げる。
笑顔は得意なの。


「…ううん、なんでもない」


そっか、あなたは言って、再び手を握り返した。

わたしもその手を、精一杯握りしめる。

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