Project Novel

僕の胸の中で、君は軽く目をこすった。

「眠い?」

そう聞いてそっと君から離れる。頷く君に微笑んで、「眠りな」と小さく言った。

横たわる君の手が、僕の手を握る。冷たい指先を温める様に、僕は両手で包み込む。

「目が覚めても、となりにいてね?」

不安気な君の瞳に映る僕は、優しく微笑んで頷く。
安心した笑顔を見せた君は、やがてすうっと静かな寝息をたてはじめた。



今度は僕が視線を窓に送る。

冬景色。それでも枯れ木の先には、小さな小さな新しい命が見える。

神様が創り出す、新しい季節。

僕がここにいて、君がここにいて、それは全て神様が決めていて。

君のその言葉が正しいのなら、神様、どうかお願いです。


せめてあの命が芽吹くその日までは、ここにいさせて下さい。

君の側に。

君の隣に。



…この病室から満開の桜が見える頃には、きっと僕はここにはいれないから。



それが僕の、最後の願いです。





…小さく目を閉じて、そんなことを祈った。

寝惚けた君の手が、僕のパジャマの裾を握る。

僕はふっと笑って、その手を布団にしまった。






【fin,】
…08.3.24…




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