Project Novel
●お茶しませんか?
「…あ」
がこんと間抜けな音と共に出てきたのは、ブルーのパッケージの無糖コーヒー。
しゃがんで取り出し口に手を伸ばしながら、長いため息をついた。
習慣というのは怖い。
例え修復不可能な喧嘩をしたとしても、もう数日間口も聞いてなかったとしても、お昼休みに自販機に来ると無意識に指がボタンを押していた。
「こんな苦いの…誰が飲むのよ」
あたしの友達で無糖が飲めるなんて…あの子しかいない。
4時間目の授業が終わりに近づくと、あたし達はいつもこっそり目配せする。
頭でカウントしながらじゃんけん開始。
勝った方はお昼休みの人気スポット、ベランダの場所取りで、負けた方は二人分の飲み物を買いに行く。
中学に入学した時からの習慣だった。高校生になった今も、ずっと続いてる。
簡単に、抜けられるわけないのに。
手の中で、ブラックコーヒーのパックが汗ばんでる。
早く飲まなきゃ、温くなっちゃうよ。
早く飲んで。あたしを急かす。
「だって…苦いって」