Project Novel
●お茶しませんか?


「…あ」

がこんと間抜けな音と共に出てきたのは、ブルーのパッケージの無糖コーヒー。

しゃがんで取り出し口に手を伸ばしながら、長いため息をついた。

習慣というのは怖い。

例え修復不可能な喧嘩をしたとしても、もう数日間口も聞いてなかったとしても、お昼休みに自販機に来ると無意識に指がボタンを押していた。

「こんな苦いの…誰が飲むのよ」

あたしの友達で無糖が飲めるなんて…あの子しかいない。


4時間目の授業が終わりに近づくと、あたし達はいつもこっそり目配せする。

頭でカウントしながらじゃんけん開始。

勝った方はお昼休みの人気スポット、ベランダの場所取りで、負けた方は二人分の飲み物を買いに行く。

中学に入学した時からの習慣だった。高校生になった今も、ずっと続いてる。

簡単に、抜けられるわけないのに。


手の中で、ブラックコーヒーのパックが汗ばんでる。
早く飲まなきゃ、温くなっちゃうよ。
早く飲んで。あたしを急かす。

「だって…苦いって」


< 4 / 33 >

この作品をシェア

pagetop