Project Novel


……………


目を開けると、カーテンからうっすらと光が射し込んでいた。

次いで聞こえるバイクの音。多分新聞配達で。


…夢、か。


ギッと緩く鳴る古いベッドは、マットがなくちゃ固くて寝れない。

カーテンの隙間から見える空は灰色で、外に満ちるのはコンクリートの香り。


あれは、日常からかけ離れた夢。

でも。


んっと伸びをして、隣に眠る寝顔を覗いた。

物音をたててもちっとも起きない。多分よっぽど疲れてるんだろう。

彼が忙しくて計画してた旅行には行けなくなったけど、こうして仕事終わりに、飲みにも行かずに来てくれる。

こうして隣で眠ってくれる。


「旅行は行きたかったけど…まぁ、いいか」


ふっと笑って、寝癖のついてる彼の髪をなでた。


あの夢のふかふかベッドより、柔らかい。

それは比べ物にならないくらい、愛しかった。





【fin,】
…07.10.13…




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