クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
総務二課がまとまっているのは、課長がのんきでお世辞にも仕事ができる方じゃないから、みんなの団結力と自主性が高いせいだと思う。船長がちゃらんぽらんでも私たちはこの船を沈めるわけにはいかないじゃない。

そして、その二課で課長の補佐として暗黙のうちに位置付けられているのが私だ。
女子社員の中では課の年長で、一応主査というグループリーダーのポジションにもいる。でも、要は私が一番忍耐強く課長のお守りに慣れているというだけだ。けして、私が望んだわけじゃない。

ん?ということは、今回の面倒ごとの割りを食うのは私じゃない?

「明日から出社だから、デスクやその他もろもろの準備よろしくね」

井戸川課長は笑顔で自身のデスクへ戻ってしまった。

「困ったねぇ、阿木さん」
「困りましたね、課長」

私は割合本気で頷いた。やばい香りがプンプンしてきたなぁ。


明日には出社してくる御曹司のために、私はデスクと備品を調達した。普通の新入社員用のひと揃えは総務一課に頼めばすぐに用意してくれる。それを私の横に配置した。それが本日最初の仕事。
あとは毎日の業務に入る。私は二課のすべての仕事をある程度把握し、回す役目を担っている。

二課の人員は十名、法務・労務に六人の人員を割いているので、渉外の仕事は私と後輩の女子社員、山根さんと持田さんの三人でやっている。
市区町村や官公庁への資料作成や提出が多く、総務内だけでなく時に営業セクションからも仕事が回ってくるので結構忙しい。
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