クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
都庁前駅の外へ出ると雨足はあきらかに強くなり、どす黒い空には妙に厚みのある雲が流れていた。嫌な空。背筋がぞくぞくしてしまう。ああ、早く帰ろう。

守衛室で社員証を見せてくれ鍵を借り、二階のオフィスへ向かう。
帰宅指示のため、オフィスは無人だ。電気や暖房をつけるまでもない。資料をデスクに置いたら即退散しよう。
豪雨の予報を侮っていたわけではない。しかし、でも空の雰囲気が雨だけで済まないぞと言ってるみたいで、私を落ち着かなくさせた。

千石くんがデスクに資料の山を置き、私の方を振り向いた時だ。
オフィスの窓全面がフラッシュライトをたかれたように光った。
1秒の間もなくガラゴロガッシャーン!という轟音。

「キャッ!!」

私は悲鳴をあげ、耳を塞ぎうずくまった。
雷が落ちたのだとすぐにわかった。このオフィスビルだろうか。近くは高層ビルだらけだからどこに落ちたかはわからないけど、とにかくものすごく近くに雷雲がある。

「真純さん!」

千石くんが私の元へ駆け寄ってくる。

「だ、だいじょ……ぶよ。驚いただけ」

なんでもない風を装って、立ち上がろうとしたら、再び窓から閃光。ドッシャーン!という激しい落雷の音に、今度は声もあげられずへたり込んでしまった。
ど、どうしよう。脚に力が入らない。これは、腰が抜けてしまったってやつかしら。手は耳から離せないし、全身が小刻みに震えてしまう。
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