クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「御曹司さん、渉外担当になりますよね。きっと」

山根さんがにこにこと言う。単純に人員が増えるのが嬉しそうだ。

「やだ、つまりは真純先輩が教育係ってことでしょ。めちゃくちゃ大変じゃない!ねえ、真純先輩」

持田さんが私の顔を覗き込んでくるので、私はうーんと本日何度目かの唸り声。ちなみに私たちは三人で昼ごはん中だ。毎日一緒というわけじゃないけれど、今日は三人とも手ぶらだったので、そろって近所の定食屋にきている。

私は腕を組んでぼそりと呟く。

「課長が全部面倒見てくれるのが一番いいんだけど」
「そんなの無理に決まってるじゃないですか」

山根さんと持田さんの声が被った。一言一句ずれていない。
なるほど、意見は一致しているのね。うんうん、私もそう思う。期待してませんよ!

新入社員の山根さんはほんわかおっとりマイペースな女の子。入社三年目の持田さんはしゃきしゃきハッキリ言いたいことを言うタイプだ。

「確かに真純先輩の負担増は可哀想ですけど、渉外はホント人が足りないので、増員助かりますよ~。それに御曹司さん、起業してたんでしょう?お仕事バリバリできますよ~」
「起業家で御曹司でしょ?プライド高いに決まってるじゃない!超面倒くさい男よ、きっと」

山根さんが言い、持田さんがマイナス要素をあげ連ねる。
ふたりは仲がいいけれど、言っていることはだいたい正反対だし、性格も真逆だ。
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