クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
オフィスに入ると、すでに隣のデスクに千石くんが出社していた。
私を見るなり第一声がこれだ。
「真純さん、おはようございます。愛梨に何か妙なことはされてませんか?」

私は肩をすくめて、答えた。

「横手さん、もう私を恨んでなんかいないわ。随分よくしてもらっちゃった」
「同じ布団で寝るとか、腕枕などを強要されていませんか?という意味です。愛梨は今、あなたに執心しているみたいなので」

ちょっとちょっと千石くん……。しかし、彼の苛立った様子は完全に恋敵に対するものだった。
そういえば、昨日帰るときも千石くんは最後まで私を連れて行こうとしてたな。
こりゃ、一緒にお風呂に入ったとは言えないわ。

「な、なんにもありません」
「本当ですね」

……阿木真純、三十歳にしてモテ期みたいです。





大嵐が終わるとあっという間に木枯らしが吹き、世間は師走に入っていた。千石くんがやってきたのが9月下旬だったから2ヶ月と少しが経った。
嵐の日のお礼は、横手さん一家に地元駅の美味しいお菓子屋さんで買ったクッキーを送った。お金持ちなおうちなので素朴なものの方がいいかと思ったら、バッチリだったらしく、横手さんから丁寧なお礼状をいただいた。
きちんと付き合って見ると、やっぱり育ちのいいお嬢さんなのだと感じる。あと、すごく懐いてくれて結構可愛い。結局、山根さんと持田さんも交えて、今度は四人で女子会をすることになった。
なんだか、若い子たちと女子ライフが充実してきております。

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