クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「総務の仕事なんてバカらしくてやってられないくらいのこと言い出すかもしれませんよ?御曹司だから下手に叱れないし」
「持田さん、そんなに脅かさないで」
「ああ、ごめんなさい!真純先輩を追い詰めるつもりは!」
慌てる持田さんの横で、山根さんがゆったりとした口調で言う。
「でも~、真純先輩って課長を始め面倒くさい男、得意そう。操縦うまいじゃないですか~。きっと、御曹司もちょちょいと丸め込んで舎弟にしちゃいますよぉ」
「待って、山根さん。舎弟作るキャラじゃないよね、私」
そんな会話をしているうちに私たちの前に日替わり定食が三つやってくる。今日のメニューはアジフライとイカフライ、ポテトサラダだ。
私たち三人はおしゃれなカフェランチより、こういうがっつり飯の方が好きだ。
揚げたてのフライをかじりながら、心の中でちょっと思う。
男の操縦がうまかったら、振られてなんかいない。そもそも浮気もされていない。
元カレの大翔(ひろと)に振られたのはひと月前だ。
証券マンだった大翔は、明るくて野球大好きの体育会系で、まあ確かにモテる男子だった。友達の友達っていう関係で、何度か飲み会で一緒になって、向こうから告白されて付き合った。
一緒にいた三年間は、たったひと月前なのに、いいことも悪いことも等しく遠い。
私は振られても泣かなかったし、仕事も休まなかった。ただ一度だけ東京タワーに行った。そこで、不思議な青年に泣くきっかけをもらった。それだけだ。
私の恋はあの瞬間にきっぱり終わったのだろうと思う。
そりゃあ、こうして振られた事実を思いだし、ちょっと立ち止まる瞬間はあるけれど、もう前を向いて歩いている。
そのきっかけをくれたのは、あの青年だった。
「持田さん、そんなに脅かさないで」
「ああ、ごめんなさい!真純先輩を追い詰めるつもりは!」
慌てる持田さんの横で、山根さんがゆったりとした口調で言う。
「でも~、真純先輩って課長を始め面倒くさい男、得意そう。操縦うまいじゃないですか~。きっと、御曹司もちょちょいと丸め込んで舎弟にしちゃいますよぉ」
「待って、山根さん。舎弟作るキャラじゃないよね、私」
そんな会話をしているうちに私たちの前に日替わり定食が三つやってくる。今日のメニューはアジフライとイカフライ、ポテトサラダだ。
私たち三人はおしゃれなカフェランチより、こういうがっつり飯の方が好きだ。
揚げたてのフライをかじりながら、心の中でちょっと思う。
男の操縦がうまかったら、振られてなんかいない。そもそも浮気もされていない。
元カレの大翔(ひろと)に振られたのはひと月前だ。
証券マンだった大翔は、明るくて野球大好きの体育会系で、まあ確かにモテる男子だった。友達の友達っていう関係で、何度か飲み会で一緒になって、向こうから告白されて付き合った。
一緒にいた三年間は、たったひと月前なのに、いいことも悪いことも等しく遠い。
私は振られても泣かなかったし、仕事も休まなかった。ただ一度だけ東京タワーに行った。そこで、不思議な青年に泣くきっかけをもらった。それだけだ。
私の恋はあの瞬間にきっぱり終わったのだろうと思う。
そりゃあ、こうして振られた事実を思いだし、ちょっと立ち止まる瞬間はあるけれど、もう前を向いて歩いている。
そのきっかけをくれたのは、あの青年だった。