クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
これほど喜んでくれるなんて想像もしていなかったので、私の頬もかーっと熱くなった。もっと早く渡せばよかった。ううん、このふたりっきりの非日常だからよかったんだ。
この瞬間は特別な出来事、そう思おう。
コーヒーを飲み、ふたりで車内に戻る。ほんの三十分前にこの車を降りた時とは、お互いの空気が違っていた。まだ、魔法の中にいるみたい。
ドキドキして、嬉しくて、胸がほっと温かい。
「真純さん、もう一個、おねだりしてもいいですか?」
胸がどくんと鳴った。そっと右を見れば、千石くんが真面目な表情でこちらを見つめている。
彼が何を望んでいるかわかってしまう。
「断ってもするんでしょう?」
こんな返しをしちゃ駄目。期待してるみたいじゃない。
いや、実際、私は期待していた。
彼からもたらされるものに。
「あなたが嫌ならしません」
「今回限りだし、キスだけだから」
自分から応えてしまったことに後悔するのは明日でいいやと思った。私は千石くんの方を向き、その綺麗な瞳を見つめた。見入ったという方が正しいかもしれない。
彼の瞳は海の色みたいに深い。
どちらからともなく顔を傾け、唇を重ねていた。柔く重ね、わずかに離す。そしてまた重ねる。唇と唇の薄い粘膜が融け合うように私たちはキスを交わした。舌を差し込んではいけない気がしたのは、たぶんどちらもで、ただひたすらに触れ合うキスを繰り返す。優しい唇。優しい時間。
ああ、私は千石くんを嫌いじゃない。嫌いだなんて思えない。
「真純さん、大好きです」
キスを終え、ちょっと泣きそうに笑った千石くんに、私は応えてあげる言葉の用意がなかった。
好きになったりしちゃ、駄目。立場の約束された彼を。住む世界の違う彼を。
それはもう絶対駄目。
この瞬間は特別な出来事、そう思おう。
コーヒーを飲み、ふたりで車内に戻る。ほんの三十分前にこの車を降りた時とは、お互いの空気が違っていた。まだ、魔法の中にいるみたい。
ドキドキして、嬉しくて、胸がほっと温かい。
「真純さん、もう一個、おねだりしてもいいですか?」
胸がどくんと鳴った。そっと右を見れば、千石くんが真面目な表情でこちらを見つめている。
彼が何を望んでいるかわかってしまう。
「断ってもするんでしょう?」
こんな返しをしちゃ駄目。期待してるみたいじゃない。
いや、実際、私は期待していた。
彼からもたらされるものに。
「あなたが嫌ならしません」
「今回限りだし、キスだけだから」
自分から応えてしまったことに後悔するのは明日でいいやと思った。私は千石くんの方を向き、その綺麗な瞳を見つめた。見入ったという方が正しいかもしれない。
彼の瞳は海の色みたいに深い。
どちらからともなく顔を傾け、唇を重ねていた。柔く重ね、わずかに離す。そしてまた重ねる。唇と唇の薄い粘膜が融け合うように私たちはキスを交わした。舌を差し込んではいけない気がしたのは、たぶんどちらもで、ただひたすらに触れ合うキスを繰り返す。優しい唇。優しい時間。
ああ、私は千石くんを嫌いじゃない。嫌いだなんて思えない。
「真純さん、大好きです」
キスを終え、ちょっと泣きそうに笑った千石くんに、私は応えてあげる言葉の用意がなかった。
好きになったりしちゃ、駄目。立場の約束された彼を。住む世界の違う彼を。
それはもう絶対駄目。