クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
そうこうしているうちにクリスマスシーズンだ。クリスマスという女子のイベントは例年あまり気にしていなかった。去年彼氏がいた時だって、あまり気にしていなかった。
そうだ、去年もその前も、元カレ大翔はグループでスノボ旅行に行くとか海外だとか言って出かけていたっけ。今思えばそれも嘘だったのかもしれない。もう胸も痛まないし、関係のないことだけど。ただ安易に信じていた自分がちょっとだけ嫌になる。

今年も連休が重なるクリスマスイブ。
千石くんに誘われることを考えなかったわけではないけれど、私も意識してしまって、あのドライブ以来微妙に距離をとっているのが現状だ。断り文句まで用意して待っているなんて変な話だけど、やきもきしている私は確かにいた。

そうしているうちに別方向から誘いがきてしまった。
山根さん、持田さん、横手さんの三人が女子会をやろうと言い出したのだ。しかも会場は私のマンション。プランを聞いた時点ですでにそこまで決まっていた。
おいおいおい、ちょっとちょっと、うち?なんで?ど〜してそうなってんの〜?という精一杯のツッコミは聞いてもらえず、三連休の日曜月曜を使った女子会のプランは若い三人によってあらかた決められてしまったのだった。

「千石さんも呼びましょう」と山根さんが提案し、私は断固拒否するつもりだった。千石くんまで私のパーソナルスペースに入ってくるなんて冗談じゃない!
しかし、すぐに横手さんが答える。「こうちゃんは連休中、スペインに行くって言ってましたよ。一緒に会社を立ち上げたお友達に会いに行くって」

あ、そうなんだ。っていうか、それ私は聞いてないなぁ。
なんて考えて、慌てて首を振る。別にいいじゃない、千石くんがプライベートの予定を私に話さなかったって。

そもそも長くキリスト教圏にいた彼にとって、クリスマスは恋人と過ごすものじゃなく家族と過ごすもののはず。
いやいや、別に私は恋人じゃないんだけど。

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