クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「俺は少し飲み過ぎてしまいました。二次会には参加してきますけど、よければそこでコーヒーでもお付き合いいただけませんか?」

千石くんが指さしたのはカフェでもなんでもなく五十メートルくらい先のコンビニの灯りだ。そんなことでよければ。私は頷いた。

「今日、ほとんど全員と話したんじゃない?」

缶コーヒーは一応先輩の私がおごった。千石くんはブラック、私はカフェオレ。

「さすがに全員は無理でしたが、全部のグループには挨拶したと思いますよ」

歓迎会の最中、彼はそこかしこを歩きまわり、ビールを注いでは挨拶をしていた。総務部長とは日本酒のお付き合いもしていた様子だ。

「手配もそつのない対応も、思ったより体育会系というか……。日本人らしい気配りだなぁと思って」
「そりゃあ、日本人ですから。俺、中高は空手部だったんですよ。そういう意味では体育会系かな」
「中高生じゃ、お酌なんかしないじゃない」
「体育会系、の部分だけ拾って話していたんですよ。お酌とか、飲み会の立ち回りなんかは、雰囲気でわかるじゃないですか」
「勘がいいね」

千石くんは結構飲んでいたように見えたけれど、隣から見ればまるで素面の顔だ。アルコールに強いのだろう。
私はあまり強い方じゃないし、お酒の味も好きではない。まったく飲まないのも雰囲気が悪いようで、付き合いとしてビールやハイボールくらいは飲むことにしている。
会計があるので今日は気を付けていたけれど、全部終わって気が抜けたらちょっと眠たくなってきた。ほろ酔いだ。

「真純さん、頬が赤い。酔ってます?」
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