クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
2.突然大仕事



「ラ・マレのレセプション?」

私が聞き返した言葉に、デスクに頬杖の野口課長はため息とともに頷いた。

「そうなんだ。来週の金曜に」

月曜日午前中の会話だ。実質二週間ないというのにレセプションの準備?

「急ですね」
「向こうさんの来日の都合らしいよ」

野口課長がさらに大きなため息をついた。僕は困ってます感をそんなに出さないでほしい。
La marée(ラ・マレ)はフランス資本の船舶関連企業だ。造船から船舶の売買、自社の船体を使った客船運行まで手広く行っている大企業。
そのラ・マレが日本発着の豪華客船アリアンヌ号を企画しているというのは、先月あたりのニュースで聞いた。造船は技術の高い日本国内でと向こうが希望しているそうで、我が社・富士ヶ嶺カンパニーがラ・マレと国内造船会社とのパイプ役を承ったのだ。これはかなりの規模の仕事になる。

「レセプションって言うけどただのパーティーをしたいわけじゃなくて、ラ・マレの担当部署から重役まで招いて、造船を請け負う浦波造船とその子会社との顔合わせ兼技術紹介の場を作りたいみたい。こちらの技術力の高さをプレゼンして、あとは客船運行について、実際の業務はうちが請け負う形になるだろうから業務提携のパーティー?そのへん全部丸々準備しなけりゃならないんだよ」
「第三営業部では人手が足りないから、うちですか?」

第三営業部は造船業、鉄鋼業分野を扱う部署だ。我が社ではかなり忙しい部署で、イレギュラーで急な仕事は確かに対応しきれないかもしれない。

しかし、押し付けられた感もある。
そりゃ渉外グループもパーティーや会合のセッティングはやる。特に対外的なイベントは回ってくることが多い。
でも、現時点の忙しさから言えば総務一課の庶務担当グループの方が余裕ありそうに思えるんだけどなぁ。 
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