クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
もううんざりなのよ。恋愛でごちゃごちゃ悩むのも、考えるのも。結婚願望や将来の不安は一回棚上げして、今は日々の生活をこなしていきたい。
面倒ごとは多いけどやりがいのある仕事、可愛い後輩たち、真面目にやった分入ってくる収入。それに満足していきたいのよ。余計なことは考えたくないの。


「真純?」

声をかけられ、ハッとした。私の目の前には焼き鳥とレモンサワー、そして隣には友人の野々花(ののか)がいた。

「ごめん。お酒飲んだらぼーっとしちゃった」
「あんまり強くないんだから無理しなくていいわよ」

野々花は私の大学時代からの友人だ。卒業後、大手外食チェーンの本社に就職したけれど、昨年同期の旦那さんと結婚し、同時に店舗のパートにジョブチェンジをした。なんでも、妊活だそうだ。赤ちゃんを産んだら、また正社員になるという彼女は、昔から変わらずアクティブでしっかり者。
ひと月かふた月に一度はお酒を飲んだりランチをしたりすることにしている。
今日は新宿の焼き鳥屋さんで待ち合わせた。

「あのね、山崎くんのこと、ホント申し訳なかったなぁって思ってる」
「やだなぁ、野々花のせいじゃないでしょ」

私は笑った。山崎くんとは大翔……私の元カレの名前だ。
元々野々花の旦那さんの友人のだった。飲み会で顔を合わせるうちに、大翔の方が私に告白してきたのだ。だから、野々花や旦那さんは出会いのきっかけにはなっても、別れた責任なんてない。
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