クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした




火曜日、目下一番の仕事であり緊急の案件になってしまったレセプションは、第三営業部と協力して進めている。
要はラ・マレのための接待会で、その仕切りだ。パーティー全体の準備をしなければならない。急遽借りられる会場を昨日から探しているんだけど、今日になって第三営業部が意見を出してきた。

「プロジェクションマッピング?」

千石くんからの報告を聞き、私は頓狂な声をあげた。

「ええ、営三はプロジェクションマッピングを使ってこちらサイドの紹介をしたいと言っています」

眉をひそめる私に千石くんが答える。今しがた、千石くんは第三営業部の担当者と打ち合わせを終えてきたところだ。午前中に区役所のアポイントがあり、私は同行できなかった。
たまたま、二階の自販機前でそれぞれの仕事を終えた状態で会い、そのまま報告会となっていた。

「室内でしょう?今流行ってるデジタルアートみたいな感じでやりたいのかしら?」

夏に大きな商業施設でプロジェクションマッピングのアトラクションがオープンしたと雑誌で見た。室内で花が咲き乱れたり、川が流れたり。自分たちで描いた絵が、壁を動き回ったり……。カップルや家族連れに人気みたいだ。

「そんな感じで想像してもらえるとわかりやすいと思います。専門家に声をかけていると言っていました」

千石くんは答え、こちらを見てにこりと笑った。

「デジタルアート、どんな感じでしょうね。試しに今夜あたり一緒に行ってみます?」
「専門家に頼むなら、そこは私たちの範疇外でしょ。行きません」

にべもなく断るけれど、千石くんはまったく応えていない様子だ。

「じゃあ、またの機会にお誘いします」

またの機会だって嫌よ。
< 33 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop