クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「土日のどっちかに、うちに取りにくるの?」
「ああ、車で行くよ」
「それほど荷物ないわよ。小さなダンボール一個分。私のは捨てちゃっていいから、大翔のものは今度家に送るわ」

私は面倒くさいなと思いつつ提案する。
休みの日に元カレを家で待つなんてとんでもなく不快な案件じゃない。絶対嫌。

「いや、真純の部屋着、すごく似合ってたしもったいないよ。これからも使えばいいじゃないか」

返答にいよいよ私は苛立ってきた。
何を言うか、この男。もったいないとか、私が決めるからいいっつうの。惜しいものならもっと早く言ってるっつうの。

っていうか、この会話の不毛な感じ。違和感。いったい何なのよ。本当は何が言いたいの?
きみとの三年間のデート代とか言って、お金でも請求したいの?私はほとんどワリカンしてきたつもりだけど。

「な、真純の好きな店のシュークリーム買ってくからさ。土曜の夜あたりどうかな?」
「え?夜?」

しかも夜に来るつもりらしい。
驚いた。別れた女の家よ?
昼間は予定があるから、夜しか行けないとか?いやいや、そもそもわざわざ来る必要ないんだけど。

「大翔、この話のために来たの?」
「真純の会社の近くに仕事できたからさ、ついでっていうか……真純元気にしてるかなって顔を見たい部分もあって」

大翔は少しはにかんだように笑った。
瞬間、ぞわっときた。ぞわぞわぞわっと。

昔はこの笑顔、結構好きだったけど、今はちょっと無理だわ。『俺ってかっこいいし、優しいよな。久し振りに会った元カノにも気遣いできるし、ちょっと隙のある照れた表情見せてるんだぜ、グッとくるよな』が溢れてる。間違いなくにじみ出てる!
< 40 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop