クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
さて、どんな言葉で応えようかと逡巡した。

『おまえの下心なんかお見通しなんだよ、ばーかっ!』……駄目駄目、これじゃ子どもっぽすぎる。
『申し訳ないけど、土曜は都合が悪いから』……大人らしくと思ったら遠慮がちな感じになっちゃった。そうじゃない。決定的に拒否しなきゃならないんだって。
『今更私の部屋にふたりっきりとか生理的に無理』……ああ!オブラートに包まなさすぎ!でもこのくらい言ってやりたい気持ちもゼロじゃない!

私が唇をむずむずさせていると、背後から聞き馴染んだ声が飛んできた。

「土曜は出かける用事がありますので、無理ですね」

びっくりして振り向くと、そこには御曹司・千石孝太郎!
すらりとした立ち姿はほれぼれするほど男前で、余裕の笑みは周囲を圧倒する。
何しに来ちゃったのよ!!もしかして後をつけてきたの?

「ちなみにそのまま俺と宿泊ですので、日曜も無理です」

まったく心当たりのない予定をすらすら喋り、千石くんは私の横に並んだ。
私が言葉を失っている間に、にっこりと大翔に笑いかけるのだ。

「恋人にちょっかいを出すのはやめてもらえますか?」

恋人……はっきり言ったわ、恋人って……。
ねえ、私たち、いつの間に付き合ってることになってたの?

「真純……」

大翔がうろたえた表情で私を見た。
うんうん、見た目より気が小さいあなたは、突然現れた身なりも顔もいい男にめちゃくちゃ驚いてるのね。元カノにいきなりこんな彼氏ができてるなんて思いも寄らなかったのね。

私も思いも寄らなかったわよ!
いつの間にか交際に発展してました!部下で、この会社の御曹司と!
見に覚えなーい!!
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