クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
でも、この場の私にできることって何があるだろう。ここで千石くんの作り話を否定して何になるのよ。
……だって、きっともう、大翔とは会うこともないんだもの。
「大翔の荷物、宅配便で送るね。私の私物は手間だろうけど、本当に捨ててしまって。お願い」
自分の声が思いのほか穏やかで驚いた。私は元カレと最後まで冷静に決別できるのだ。それは本当によかった。
「わかった。時間とらせてごめんな」
大翔は短く言って、するりと私たちの横を通り抜け、公園を出て行った。
その背が見えなくなると千石くんが口を開いた。
「怒っていますか?」
私はむっつりと黙り込んだ。ええ、怒ってるわよ。誰が頼んだのよ、彼氏のフリをしてほしいなんて。
たとえ、そのおかげで冷静に大翔を追い払えたのだとしても、他に方法くらいあったでしょうよ、あなた頭いいんだから。
「真純さんがあの日泣いていた理由があの男なら、これ以上あなたを傷つけさせるわけにはいかなかった」
「馬鹿じゃないの?千石くんには関係ない」
「ありますよ。好きな女のことです」
すごく嫌な気分。胸がむかむかする。
同情みたいな真似はよしてほしい。カッコいい彼氏を振られた相手に見せつけ、見栄張らせてやろうってこと?悪趣味だ。
あなたは頭がいいしお金持ちかもしれないけれど、全部自分都合なのよ。
「真純さん」
「もういいわ」
会話を断ち切って、私はオフィスに向かい歩き出した。千石くんを置き去りに。
その日の午後は、余分な話はほとんどせず、仕事の打ち合わせ以外で言葉を交わすことはなかった。千石くんは私の無言の怒りを感じ取り、それ以上刺激してくることはなかった。
……だって、きっともう、大翔とは会うこともないんだもの。
「大翔の荷物、宅配便で送るね。私の私物は手間だろうけど、本当に捨ててしまって。お願い」
自分の声が思いのほか穏やかで驚いた。私は元カレと最後まで冷静に決別できるのだ。それは本当によかった。
「わかった。時間とらせてごめんな」
大翔は短く言って、するりと私たちの横を通り抜け、公園を出て行った。
その背が見えなくなると千石くんが口を開いた。
「怒っていますか?」
私はむっつりと黙り込んだ。ええ、怒ってるわよ。誰が頼んだのよ、彼氏のフリをしてほしいなんて。
たとえ、そのおかげで冷静に大翔を追い払えたのだとしても、他に方法くらいあったでしょうよ、あなた頭いいんだから。
「真純さんがあの日泣いていた理由があの男なら、これ以上あなたを傷つけさせるわけにはいかなかった」
「馬鹿じゃないの?千石くんには関係ない」
「ありますよ。好きな女のことです」
すごく嫌な気分。胸がむかむかする。
同情みたいな真似はよしてほしい。カッコいい彼氏を振られた相手に見せつけ、見栄張らせてやろうってこと?悪趣味だ。
あなたは頭がいいしお金持ちかもしれないけれど、全部自分都合なのよ。
「真純さん」
「もういいわ」
会話を断ち切って、私はオフィスに向かい歩き出した。千石くんを置き去りに。
その日の午後は、余分な話はほとんどせず、仕事の打ち合わせ以外で言葉を交わすことはなかった。千石くんは私の無言の怒りを感じ取り、それ以上刺激してくることはなかった。