クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした




翌日、私はコンベンション会場に設定した青山のホテルに来ていた。
方々当たって、過去プロジェクションマッピングの実績のあるホテルを選定した。ホテル側の担当者がついてくれ、大広間の構造や機材の置き場所などを説明してくれた。タブレット端末で過去イベント時の写真も見せてくれ、雰囲気もわかる。

「弊社の担当と、映像の技術者を交えて、日を改めてお打合せを設定させていただきたいのですが」
「ええ、富士ヶ嶺さんのご都合で進めてください」

ホテル側からしたら、富士ヶ嶺カンパニーは上客だ。今回のコンベンションは大掛かりなものになるので、担当者としても実績になりありがたいのだろう。

互いに好印象で最初の打ち合わせを終え、ホテルを出ると前庭のアプローチに千石くんが姿を現した。
息が弾んでいるところを見ると、急いできたのだろう。

「打ち合わせは終わったわ」

今日は私ひとりで事が足りるので、千石くんは連れてこなかった。そもそも彼は別件の会議に呼ばれていたからだ。おそらく会議が終わり、私の外出を知り、飛んできたのだと思う。

「俺も本件の担当です」
「情報は共有するから安心して」
「真純さん」

どこか焦っているように見えるのは、急いできたせいではない。
たぶん、昨日の昼の件だ。私がよそよそしいからだろう。
何を言いだすのだろう。ナチュラルに傲慢だから嫌になってしまう。
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