クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
3.ご褒美デート
きらめく灯、さんざめく人たちの中心で、かたく握手を交わす男性が三人。
フランス船舶企業ラ・マレのCEO、日本における船舶製造を取り仕切る浦波造船の社長が握手を交わし、その中央で笑顔を見せるのは我が富士ヶ嶺カンパニーの社長。
プロカメラマンが写真を撮り、三人はフラッシュの中心で笑顔を見せている。
本日、私たちが手がけていたレセプションは無事に終了した。
やっっっと終わった!というのが素直な感想。顔合わせの和やかな会とはいえ、仕込む方には大変な準備が必要だった。
第三営業部と私たち総務二課は、ここ数日は死にそうな忙しさだったもの。
無事今日を迎えられ、予定通りのプレゼンができ、会が円満に終了することに安堵している。
キラキラの光をやや遠くに眺め、私はスーツ姿で会場の隅にいた。
横には千石くんがいる。
ほんの30分前、私は見ていた。千石くんがお父様の社長に呼ばれているところを。そして、ラ・マレのCEOと浦波造船の社長に挨拶しているところを。
そうだよね、後継者だもんねぇ。
こういうところで社長と並んで立つ彼を見ると、やはり世界がとびきり違うのだと感じずにはいられない。
千石くんはゆくゆくは富士ヶ嶺を継ぐ人間なんだ。社長の考えでたまたま総務にいるだけ。
はぁ、なんでこんな人が私のこと好きなんだろ。