クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「真純先輩~」

隣に座った涼次郎くんと後ろに立つ千石くんを観察してると、その向こうから山根さんが声をかけてくる。

「まだかかりそうです。一回休憩してもいいですか~?」
「私も、ちょっとひと息入れたくなってきました」

我慢強い持田さんも言う。そろそろ集中切れる頃だよね。

「うん、私も行くから自販機でコーヒーでも飲もうか」
「よかったぁ。私、ミルクセーキ飲んじゃお」

山根さんが大きく伸びをし、先に立ち上がった持田さんが「ふとるわよ」と釘をさす。
私も甘いものが飲みたいなぁ。ちょっと疲れちゃった。

自販機前でほっとひと息だ。
私も山根さんにつられてミルクセーキを買ってしまった。疲れた脳に糖分がしみるわぁ。なんて、彼女たちの前でぼんやりできないから、クールにミルクセーキを飲むけど。

「涼次郎くん、いつ見ても可愛いですねぇ」

山根さんがきゃっきゃとはしゃいでいる。そういえば涼次郎くんが来るたび、山根さんは嬉しそうだ。

「手ぇ出しちゃダメよ。犯罪だから」

持田さんがキリッと正論。
うーん、さすがにわかってるとは思うけど、毎回はしゃいでると心配になるかもね。山根さんは全然めげない。

「やだなぁ、持田先輩ったら。私は純粋に可愛いものを愛でてるんです!涼次郎くんの少年から青年に移り変わる繊細な思春期の香りがたまらないじゃないですか~」
「思春期の香りって表現はちょっと危ないわね」
「ほら、真純先輩も同意してる」

私たちの若干引いた観察を気にせず山根さんはうっとりと言う。
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