クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
間もなく食前酒が運ばれてくる。何がいいかと聞かれ、お任せすると言ったらミモザを用意された。甘くて飲みやすいオレンジのカクテルだけど……。

「シャンパンはこちらを使用しました」

わざわざ見せてくれたのは、私も知ってる最高級の銘柄。
うわ、私の一杯のためにこのシャンパン開けちゃったのね。もったいないから次もミモザをお願いしよう。

しかし、私の前に次にやってきたのは赤ワインとオードブル。木の実やハム、チーズなどを年嵩のウエイターの男性が説明してくれる。

「こちらのチーズは特殊な発酵しているもので、タンニンの強いワインにベストマッチと言われております」

ワインの銘柄に合わせた内容みたい。
ってことは、お料理事にワインが変わるの?開けたワインは飲み切れなかったらどうなるの?一本一本、きっとかなりのお値段よね?

「真純さん、ワインはお口に合いますか?渋すぎるようなら、もう少し飲み口が軽いものに変えます」

千石くんが微笑んで言うので、私は首を左右にぶんぶん振った。充分です。私の好みでほいほい一本何十万円もするワインを開けないでください。
貧乏性というわけじゃないけれど、ひとり暮らしでそこそこ倹約しつつお金を溜めている私からしたら随分贅沢なディナーにきてしまった。

「この店はフレンチがメインですが、オランダやイギリスの家庭料理なんかも美味しいです。コースではなく、アラカルトで色々きますので楽しんでください」
「ええ」

気おくれしているところを見せないように、慣れた雰囲気を装うけれど、次から次へと出てくる料理とワイン、その説明に頭がいっぱいでお腹もいっぱい気味。
でも出してもらったものを残すのも悪い。結果、私は千石くんとは短い会話をしては、食べてばかり。
千石くんも若者らしい食欲で料理を楽しんでいるから、ぶつ切りの会話でもさほど気づまりでないのが救いだった。
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