クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
そんなことを思いながら、お昼休憩に出る。
山根さんと持田さんと、今日向かったのは牛丼屋だ。土曜の豪華ディナーで昨日は何も食べたくなかった。今日は逆にジャンクでがっつりなものが食べたい。
お腹いっぱいでちょっと眠くなりつつ、三人でオフィスに帰ってきた。

すると、私のデスクに一通の手紙が置いてある。
横長のレターセット的な封筒には、阿木様と小さな字で書かれてあるので、私宛で間違いなさそうだ。
なんで手紙なんだろう。社内メールがあるのに。
差し出し人は誰だろう。裏に横手という苗字が記載されてある。

「あれえ?横手愛梨(よこてあいり)ですかねぇ。私の同期の」

山根さんが無造作に封筒を覗き込んでくる。
この時点で、山根さんも持田さんも、置かれた封書が個人的なものだとは思っていない。私自身もだ。他部署から様々な形式の書類が回ってくるからだ。

「秘書課の新人ですよね。横手さん」
「あー、そっか、秘書課の。なんだろうね」

思い浮かべるのは秘書課の横手さん。
目の大きな可愛い子だ。長い髪は毛先でくるんと巻いていて、いつもエレガントキュート系の甘めなスーツやパンプススタイル。育ちがよさそうなのに、高嶺の花タイプではない。合コンに行ったら、一番人気になりそうな子だ。

無造作に封を開け、中身が本当に便箋と手紙だった時点で私は嫌な予感はした。
しかし、読むのをやめるタイミングは逸してしまっていた。山根さんも持田さんも覗き込む便箋にはこうあった。

『阿木真純主査
大事なお話があります。今日の終業後、お時間をいただきたく思います。
カフェ・ブルーノ 18時半
横手愛梨』
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