月光


「そうだよね、冷凍食品ってお腹に溜まるよね。」


全く的外れなことを言っている。


私は、あんたの一挙一動にむかついてるってのに。


人の弁当にケチつける雅が嫌いなのに。


食べ物でお腹は満たされてなんかない。


不快感でしか満たされていない。


「うん、もういらない。

食欲なくなった。」


ここまで言えばさすがに分かるだろうと思い切り言ってやる。


「そっかあ。」


雅は悪びれた様子は一切なく食べ続ける。


唖然とした。


怒りを通り越して無感情で満たされる。


まるで、心が薬品で消毒された真水でいっぱいなように。


時計を見ると、昼休みはまだあと半分くらい残っていた。


……去年は昼休みなんていくらあっても足りないくらいだったのに。


二人っきりのお弁当は、味がしない。


お母さんのお弁当ってこんなにまずかったっけと思う程に。


結子は今年のクラスでもそれなりに楽しめているのだろう。


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