月光


私は眼鏡をかけているから、自分の思いとは裏腹にどうしても真面目に見られる。


……別に優等生じゃないんだけどな。


腕に頭を預けた状態でレポートを埋めていく。


豚の目玉の解剖は、ごく自然なことであるかのように受け入れられた。


中には気味悪がって目をそらしている子もいたみたいだけど。


水晶体が真珠のような鈍い輝きを放っていて、何とも言えない美しさだった。


思わず持って帰りたい衝動に駆られたけれど、それを人前ではしたくはなかった。


ああ帰りたい。


溜まっているドラマも見たいし、新しい雑貨も探したい。


勉強するなんて考えは一切浮かんでこなかった。


放課後のことを考えるとついテンションが上がってレポートにも精が出る。


いつもより長めに書いて、チャイムがなったら教室を飛び出した。


あと一時間あることなんてものともしない。


どうせ国語だし、寝ていればいい。


成績はそこそこ取っているから怒られたことがない。


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