月光


「あたしなんかしょっちゅう喧嘩だよ!」


舞奈が言った。


「うちらってお互いにいつも言い過ぎちゃうんだよね、それでよく言い合いになるんだ。」


そっちの方が羨ましいくらいだ。


「試合始めてー!」


先生が言い出して、私達は自分の立ち位置につく。


人間関係も、こんなふうに固定されてしまうのだろうか。


一度決められた立ち位置に一生居続けるのか。


「ハナちゃん、サーブ!」


「うん、分かった。」


ボールを放つと、不恰好だけれど、入った。


「ナイス!もう一回!」


……そうだった。


バレーボールのサーブは点数を取られるかミスしない限り終わらないんだった。


なんで今日に限って。


何度目かの『今日に限って』。


もう一回ボールを打つ。


……入った。


チームにとってはいいことだけれど、私にとっては最悪の事態が起きている。


だけど、わざと外せばいいものの、バカ正直に私はずっとサーブを打ち続けた。


< 73 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop