月光


もうだめかもしれない。


座っているだけでこんなに倒れそうなんだから。


先生が近づいたタイミングで静かに声をかけた。


「……先生、具合が悪いので、保健室、行っていいですか?」


「あなた、顔が真っ赤じゃない!

我慢しないですぐに行きなさい。」


「……はい」


私が席を立ってドアを開けると、今まで散々思い思いに騒いでいたのに、一気に視線がこちらに集まった。


ドアを閉めると、中から声が漏れてくるのが分かる。


「えー!インフル?」


クラスでも目立つカナちゃんが大声で言った。


「まだ分からないことを決めつけないの!」


先生がカナちゃんを怒っているけれど、その声には「具合が悪いなら菌を撒き散らすな」という意味が含まれているように思えて、怒りとも悲しみともつかない感情が湧いてきた。


動かない足を無理やり動かして階段を下って、どうにか保健室までたどり着いた。


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