月光
「……私、学校行ってるし。
インフルが治って明日から登校なんだけど。
それに、私は君の名前を聞いてんの。」
「起きたら答えてあげる。」
彼の名前への興味の方が勝ってしまい、つい起きてしまう。
「……起きたよ。
……ねえ、見たこと、ある?」
以前よりも端正になった顔立ち。
もう前の面影はほとんどない。
だけど、知ってる。
この人と、私はどこかで会っている。
「……ひっでえ、忘れたの?」
「……名前が出てこない。
だけど、私、君のことは知っている。」
目の前でため息をつかれる。
「……ごめん、思い出せなくて……」
「まあいいけど。」
意外にも、その口調はあっけらかんとしていた。
「また今度。
たぶん俺ら、また会うよ。」
「……なんで分かるの?」
「本当に覚えていないんだな。
俺、この辺に住んでいるから。」
「……ふうん。じゃあ、また。」