深紅の薔薇姫に愛を
琉が考えていることを、大抵ツカサは兄である憂いさんに相談していた。

その相談がないってことは、よっぽどのことなんだろう。

あたしを探している理由って、そんなに大切なことなの?

「なんで、この街にいるってわかったんですかね……」

あたしがよわよわしくいうと、彼は考えて、推測をあたしにくれた。

「……麗薇ちゃんの周りに、琉と繋がった人でもいるんじゃない?」

さっきの言葉も衝撃だったけど、今の言葉も衝撃だった。

あたしの周りの誰かが、あたしのことを琉に報告している……?

あたしの周り、と言えば大体は絞られてくる。

だって、仲がいいのはほんの数人なんだから。

もっといえば、一緒にいるのは菜月と華夏以外に桜龍だけだ。

その中の誰かがそんなことをしているなんて、考えたくもなかった。

みんなは、あたしに楽しさと幸福を与えてくれるから……。

もし、そうだとすれば。

あたしはまた、壊れてしまうのかもしれない。

だって、大切なひとに裏切られるなんてつらいもの。

まだ、あたしには疑問があった。

「どうして、あたしにそんなこと言ってくれるんですか?憂いさんはツカサの兄な

のに……。」

これが、疑問点だった。ツカサの兄ならば、普通は琉側だろう。

なのに、彼はあたしが傷着いてしまうと考えて、いま忠告してくれている。

そんなの、すこしおかしいとあたしは思うから。

「”あの日”見てしまったんだ。」

”あの日”というのは、あたしの最大のトラウマである、追い出された日だろう、

そのまま、彼はあたしの顔を伺うようにして、話し始めた。

「雨の中、泣いている麗薇ちゃんを。」

ただ、ひとり冷たい雨の中、立ち尽くし泣くことしか出来なかった。

言葉も出ない。どうして、そんなことになってしまったのかもわからない。

どうして、彼かあの女を愛しているのかもわからない。

どうして、彼はあたしを嫌いなんていったのかもわからない。ほんのすこし前は、

嫌い、なんて態度みたこともなかったのに。

どうして、ああなって閉まったのだろう。

あたしは、彼に愛されたかっただけだ。愛が欲しかったのだ。

お願いだから、あたしを否定しないで欲しかった。
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