深紅の薔薇姫に愛を
足速に家に急げは、手入れの施された庭園が見える。

なくなったあたしのお母さんが好きだったという薔薇の花を咲かせている。

……深紅、青、白、紫、ピンク、黄色。

さらにそこを抜ければ、白で統一されたヨーロッパ風の家が見えてくる。

ここは、あたしにとっての檻だ。なにも与えてくれないのに、あたしを縛るもの。

使用人がいるかもわからないほど、静かだ。

誰にも会いたくなくて、あたしの部屋に行った。変わらないそれは、唯一あたしに

与えられた安泰だった。あたしはベッドにダイブし、眠りに落ちた……








……もう、なにも聞かないから、、。

なにも、言わないで。あたしを苦しめないで。






『麗薇。』

誰かが、愛しくあたしの名を呼ぶ。そして、手を差し出す。

でも、それさえ闇に消えてしまう。

闇が消えれば、その誰かは遠くにいて。あたしの知らない誰かもわからない女が男

の腕を組んでいた。これは、昔の情景なのだろうか。

『俺は、おまえが嫌いだ。俺は好きなのは__________だから。」

ガラスがパリんと割れるように、心が壊れる。

ハッキリと、その人物が見えた。……漣。なんで、こんな夢に出てくるの……。
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