深紅の薔薇姫に愛を
「……もう、気が済んだ?」

あたし、お弁当食べなきゃ。

「明日、昼休みここに俺の仲間呼んでおくから。」

そう言って、彼は屋上から出ていった。


彼の強引さにすこし苦笑いしながら、あたしも屋上を出た。

浮かぶのは、昔のあたし。

誘われて、浮かれていたあたし。

あたしはただ、愛して欲しかっただけだ。

あたしは1人じゃないと、言って欲しかっただけだ。

だけど、あんなふうになるなんて、予想もしていなかったんだ。

思いだせば、自然と涙が零れる。

あたしは涙を吹いた。

早退、しよう。

あたしは午後に家に帰った。
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