深紅の薔薇姫に愛を
”葉瀬が姫にした女”を見極めてみたいのかどうなのかを見分けることは出来ないけ

ど、きっと彼らにはあたしにこんなに良くする理由があるはず。あたしを好き、な

んてことではないんだと思う。現に、あたしに好意を寄せる感じなんて微塵もない

”女好き”の大河も、あたしに笑いかける目は笑っていないし、目の奥は暗闇のそれ

が広がっている。

「去年は遙真とこの別荘だったから、次誰にする?」

千紘のその何気ない会話に、あたしはものすごいものを感じた。

「え、遙真の家ってお金持ちなんだ……!」

……すごい!なんて、あたしが言えたものではない。だけど、あたしはお人形さんだ

父親が与えたその家で、ひっそりと隠れて暮らすのだ。そして、父親に利用される

それが、あたしの人生なのだ。

あたしの家にも、一応別荘はある。1度だけ、生きていた母親の側の祖父があたしを

連れて行ってくれたのだ。だけど、それから大騒ぎになりあたしはあの家を出るこ

とができなくなったのだ。

「そうだよ。あと、ここにいるみんな、別荘持っているよ。」

なんだろう、この完璧の集まりは。この前の期末テストだって、漣は滅多に授業に

出ないのに軽々しく堂々の首席だった。あたしは漣に続いた2位。それ以外のみんな

も10位内に入っていた。スポーツ万能、ときたら女子にもてないはずがない。

……みんなもあたしと同じような環境で生きてきたのなら、あたしの思いは分かるの

だろうか。
< 112 / 223 >

この作品をシェア

pagetop