深紅の薔薇姫に愛を
「次、漣でよくない?麗薇もいるし、」

…え、あたしも行っていいんだ。なんか、嬉しいな。

だけど……同じような環境であってもあたしの思いは分からないはずだ。

だって、いろんなことがありすぎたんだから……。

「あたしも、行っていいの……?」

こんなことを聞くのは、直接あたしの居場所があることを確かめたいのだと思う


居場所を作って欲しい。与えてほしい。自分を求めてほしい。

………ただ、それだけなのだ。

好きになることも、怒ることもぜんぶ、ぜんぶ忘れたって思っていた、

あたしには、”愛する”ということがないのかもしれない。

あたしを求めてほしいの願うのに、あたしは相手を望まない……なんて、矛盾した考えだということは重々承知している。

「当たり前だろ?」

大河が珍しく眩しいほどの爽やかな笑顔を見せる。

それが不自然ではないのが不思議だ。

「てか、浴衣持ってんの?」

千紘は思い出したようにあたしに問いかけた。

……浴衣か……、着物ならお父さんのお母さん、あたしのおばあちゃんのがたくさんある。だけど、浴衣はない。家にあったとしてもあたしが使っていいものではないから。

あの家でのあたしの立ち位置は”無用心で出来てしまった子”だ。

お父さんもお母さんも子供を作る気なんてなかったらしい。
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