深紅の薔薇姫に愛を
お祭り当日。

千鶴と千紘のお兄さんである、千歳さんに着付けと髪型のアレンジをしてもらった

耳の横の髪は編み込みをして、右耳付近に持ってきてお団子でまとめる。

それから、ナチュラルメイクもしてもらった。

漣は黒にすこし模様の入った和の浴衣。

大河はグレーの生地に、紺のラインが入っている。

千紘と千鶴はペアの浴衣で、白い浴衣。

遙真は意外にも、明るい紺色。

みんな面白がっているのか、片方の髪の毛を上げている。

イケメン度が上がってカッコよすぎるんだけど。

通り過ぎる人達も、頬を染めて彼らを見ている。

なんかあたしにトゲトゲした視線も感じるんだけど。

きっとこれは、女の子たちからの視線。

こんなのは慣れっこだ。

「………可愛いよ」

え、と思って考えていた頭をとっさにあげた。

そこには手の甲を口元にあて、頬を染める漣の姿が。

……え、漣が言ったの?嘘でしょ……?

「うん。可愛いね。」

なんの恥じらいもなく、微笑んで褒めてくれる千鶴。

「ありがと。」

あたしも、それに応えるように笑った。

顔を背けた人が何人かいたけど、たまに起こる現象だからあんまり気にしない。

「いくか。」

総長である漣、の威厳のある声にあたしたちは逆らわず歩き出す。

前を行く彼らの背中は大きく、暖かい。

いつか、彼らみたいにあたしを傷つけてくるのかもしれない。

あたしを”嫌い”、”愛してない”という日が来るのだろうか。

あたしをイラナイと言う日が来るのだろうか。

……そうなれば、あたしはどうすればいいのだろうか。

今、ここにいるあたしがあたし。
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