深紅の薔薇姫に愛を
花火と距離が近いのか、あたしの前髪を揺らす風でさえも、いまでは愛おしく思える。

彼らが、あたしを変えてくれた。

何かに怯え、見えないなにかを求めていたあたしを。

愛を知らなかった。

それは、1度裏切られてしまったから。

愛だと信じていたものを、壊されてしまったから。

愛されたいと、自分を求めてほしいと、願ったあたし。

居場所が欲しい。

あたしはあたしだけなのだと、確証がほしい。

自分だけなのだと、解らせてほしい。

思いがどんどん募っていく。

それは、まるで闇夜に浮かび上がる金の月と花火のように。

出会いは一瞬である。

だからこそ、彼らといまを共にしたい。

あの人たちとのことが、このまま解決するなんて思っていない。

父親のことも、唯莉のことも、亜衣梨のことも。

だけど、彼らがいる。

どうしようもなく暖かくて、たまに下っ端くんたちに話しかけたらすごい尊敬されていることだって。

どんなに周りから滑稽だと思われたって、自分の道があるから。

自分は自分だけのもの。

あたしはあたしだけのもの。

この人生はあたしのもの。

彼らと出会い、あたしは感情を込めていきたいと、そうおもった。
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