深紅の薔薇姫に愛を
花火が終わり、倉庫に帰路を急ぐ。

どうやら大河たちは騒ぎまくるようで、漣からは絡まれたくないのなら早く寝ろ、と釘を刺されたので浴衣を脱いでお風呂に急ぐ。

統一感のある、すっかり使い慣れた総長室のお風呂に行くと彼らを思い出した。

それにしても、彼らの浴衣姿はかっこよかった。

周りの視線をガッツリ持っていく。

髪を外すと、染め上げた栗色の髪に目がいく。

この色は、”あの人”のミルクティ色の髪の色に似ている。

だけど、彼はあたしの今の色を好まない、

なぜなら、彼が大嫌いだった母親の色なのだから。

それを、彼の周りの人はみんな知っている。

だから絶対に我龍には栗色はいなかった。

広いバスタブに浸かると、湯気が出てきて暖かい。

なぜだか………妙に胸騒ぎがするのだ。

お祭りで、彼らの”音”を聞いた気がするから。

あたしは彼らに怪しまれないよう、青ざめた顔を逸らした。

血色がよく見るように、頬には赤のチークを。

それぐらいしなければ、平然を保ってなんて居られなかった。

彼らがこんなあたしに気づきそうで。

あたしが”それ”だと気づかれそうで。

裏切られて、嫌われて、罵られて、居場所を奪われて。

もう一度、そうなってしまうのではないかと不安だから。

それは、あたしにとっては心を壊してしまうぐらいのものだった。
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