深紅の薔薇姫に愛を
髪を束ねて、体を洗う。

真っ白に染まるあたし。……このまま、染まりきりたいと思う。

だけど、あたしはもう純白でも純粋でもない。

あたしは穢れていて、汚くて。

心までもが、侵食されているのだから。

ふわりとフローラルの香りが広がる。

どんなにあたしが望んでも、これからがかわることはないだろう。

あたしには、”約束”がある。

それは、お父さんがあたしのお母さん、未薇と約束したものだという。

あたしの未来は決まっている。

あたしが生まれた時から、あたしは疎ましい存在で誰も愛さない誰にとっても必要のないものだった。

鼻に掠める香りは漣と同じ匂い。

あたしは泡を落とすと、また湯船に使ってからお風呂を出た。

下着をつけて、ルームウェアを着ると脱衣場を出た。

それからあたしは幹部室に向かう。

「麗薇、どうした?大河に絡まれるぞ。」

いきなりこないはずのあたしが来たのがそんなにびっくりだったのか遙真があたしに喚起する。

「ああ。大丈夫。喉が渇いたから。」

総長室にも冷蔵庫はあるけど、あそこにはなにも入っていない。

漣が普段あれを利用しないからだという。

「はい。これでいい?」

あたしが来たことを察したのか、千紘がいち早く冷蔵庫からミルクティのペットボトルを取り出してくれた。

「うん。ありがと。おやすみ。」

それからみんながおやすみ、と返してくれるとあたしは部屋に戻った。

幸いにも酔ったら厄介だという大河も、漣も千鶴もいない。

きっと、大河は酔ったら厄介というのは素の”女嫌い”が出てしまうからあたしに見せないようにするためなんだと思う。

彼らはあたしが大河のことを本当の女好きと思っていると思っているから、そんな処置を取っているんだと思う。
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