深紅の薔薇姫に愛を
”如月友初”という存在がどれほどのものなのか、目の前でいやというほど分かっていたつもりだった。

だけど、実際にそれをするにはとても難しかった。

何度も弱音を吐きそうになって、辞めたくなる。でも、兄貴は絶対に吐き出さなかった。

きっと彼が死んでしまったのは麗薇に告白して失恋し、壊れた心でずっと抑えていたストレスが一気に出てしまったのだろう。

次男だと俺を罵倒し、見向きもしなかったのにいまではボロ雑巾のように使う。

……人間なんて信用ならない。直ぐに裏切る。

裏切らなければ、裏切られる。

絶望の淵にたつ俺を救ってくれる人なんていなかった。

自分に降り掛かって初めてそれを知るなんて、なんて愚かだったのだろう。

”如月”ではなく、普通に生まれてきたならば。

家族の愛も貰えたのだろうか。

人に愛されることが、愛することが当たり前になってたのだろうか。

……やっぱり、俺と麗薇は似ている。

強がっていても、実は脆くて弱い。

誰かに支えてもらわないと立っていられなくて。

常に居場所を求める。

家族がほしい。

家の名に繋がれた、表だけの愛情の家族などいらない。

ただ、自分を”如月漣斗”を見て欲しかった。
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