深紅の薔薇姫に愛を
生きたくて、自分で歩きたくて、自分で地に足をつけたくて。

だから、愛されてたくて。

そうすれば、きっとなにかが掴めると思ったから。

「うん。そうだよ。生きたかったんだ。」

大河も、涙ぐんでいる。

「でも、愛ってなに?好きってなに?恋ってなに?この感情はなんなの?」

認められたい。自分で生きていきたい。

……なのに、こんな感情は必要なの?

「麗薇、落ち着け。」

「ねえ、わかんないの。こんなのあたしに必要じゃない!」

辛いだけ。悲しいだけ。

何も得られないのに、こんな張り裂けそうな思い、したくない。

「大切なんだよ。それを、漣斗が教えてくれた。」

「……なんで?」

「それを、自分で見つけるんだよ。……生きていくために。」

あたしが大河の過去をきいて、もうあたしには隠さなくていいと言うつもりだったのに、あたしが慰められる。

「麗薇が言わないなら、俺は聞かない。だけど、俺は麗薇のそばにいる。」

女嫌いの大河が……あたしに、奥から微笑んでくれた。

「一緒に、生きていこう、」

伸ばされた手をとって、生きていく。

あたしは嫌われたくないから、自分を偽っていた。

ホンネなんて言えなくて、なんとか自分の思ってないことで誤魔化した。

嫌われたくない、だから引いて。

きっと、唯莉の前でも隠していた。

きっと、彼女は受け入れてくれるのに。

「嫌われたくなかったっの!」

涙でぐちゃぐちゃの顔には、晴れたなにかがあって。

それでも、こんなあたしでも、琉は愛してくれていたのだろうか。

居場所が欲しかった。

あったかくて、やさしくて、すべてを包み込んでくれるような。


大河は、あたしを抱きしめてくれた。

あたしの過去は、大河にくらべるとやさしいものなのかもしれない。

肉親からの裏切りは答えるものだから。

「ここにいるやつは、みんな耐えてきたんだよ。」

ぽつり、彼が声をもらす。
< 144 / 223 >

この作品をシェア

pagetop