深紅の薔薇姫に愛を
side 千紘

なんでなのだろうか。

なんで、どうして俺たちは双子というもので生まれてきてしまったのだろう。

望めばなんでも手に入る。

2人で分け合うものも、2人だけのものもあった。

だけど、成長するにつれて半分にできないと知ったものもあった。

それは、”愛する人”だった。

金持ちで両親は海外生活という環境のせいか、俺は極端に表情が乏しかった。

それは双子の千鶴もそうで、俺たちは俺たちだけの世界に浸ってきた。

興味のあるものには手を出して。

この優秀な遺伝子のおかげでだいたいのことはできた。

だけどしばらくすると、俺たちに勝てる人はいなくなる。

みんな、下になって面白くない。





『─────なにしてんの?』



『みてわかんだろ。』



暗い路地裏。踏み入れたことさえなかったそのテトリーに、俺たちは入ってしまった。誰かの低音に問いかけられるが、俺は至って普通に返した。


血塗れのそいつの顔を殴り、蹴り続ける俺と千鶴。



『俺が最近折角つくったテトリーで暴れられると面倒なんだけど』

すごい威圧感と貫禄を感じた。

そのことばには抑揚がなくて、冷たくて。

初対面のそいつに興味が湧いた。

”コイツなら、俺たちが悠々とは超えられない”

そう、悟ったきがした。

『るっせーな!』

いささかそれを試したくなって、実行に移した。

『あんま暴れんなって言っただろ!』

その瞬間、拳を受け止められて蹴りを入れられる。

仮定が確定に変わった瞬間だった。

あとから聞いた、ソイツの名前。

『────漣斗。何してんだよ。行くぞ。』

”漣斗”。


蘭の意思をつぐ、井上 相良の後継者となりうるかもしれない男。
< 152 / 223 >

この作品をシェア

pagetop