深紅の薔薇姫に愛を
「麗薇に関わんな。」

地を這うような低音ボイスにあたしはビクリとする。

「……”覚悟”は出来たってことかな?」

「──あ、麗薇。これ。」

そう言ってあたしに投げたのは、台紙につけた深紅(フカベニ)の薔薇が付けられたピアスだった。

……これは、薔薇姫の象徴。

漣にバレたくなくて……あたしはそれを背に隠した。

そんなあたしをみてニヒルに笑うと、彼は窓から飛び降りて行った。

緊張の糸が切れると、あたしは床に座り込んだ。

「麗薇、怖い思いさせてごめんな。」

またあたしを抱きしめて、切なそうにそういうから。

「……大丈夫だよ。」

彼の左手にあたしの手を重ねた。

ずっと心に秘めてた、琉への思いが、昔の想いがぶり返してしまうのではないかと心配だった。

心が壊れてしまいそうで……すべてを放ってしまいそうだった。

琉が引いたことによって蘭龍も引いたのか、一斉に静まる。

琉にあって危険が近ずいたからなのか、漣に抱きしめられているからなのか心臓が収まらない。

ドクドクと高鳴る心臓と逆流したような感じだ。

「麗薇っ!」

叫んで入ってきたのは、千紘だった。

「……ち、ひろ」

後ろには千鶴と遙真が続いて入ってくる。

「大丈夫か?」

漣があたしを離すと、彼は両手であたしの顔を挟んだ。

「……う、ん。」

また、あたしは嘘をついた。

弱いところを見せたくなくて強がればいつしかあたしは強いとばかり思われていた

だから、傷つけられて。

強いとレッテルをはられて。

本当は直ぐに割れてしまくぐらい弱いのに。

強がって、強くなれたと思ったのに、本当のあたしを見てくれないことに少し残念がって。

……あたしは自分勝手なのかな。

千紘はあたしの頭を撫でてくれる。

その手つきは優しくて柔らかくて。汗をかいていたから急いで駆けつけてくれたのだと思うと嬉しくて、。

……自然と涙がでた。

「来てくれてありがと。助けてくれてありがと。」

本当に助けたのは、漣だ。

だけど、あたしの心を救ってくれたから。

壊れそうなピースを繋げてくれたから。

ピアスをかくして、あたしを隠して。

そんなあたしを救ってくれた。それがどれほど嬉しいか。
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