深紅の薔薇姫に愛を
「つーかさ、旅行、行かねぇの?」

始まりは、遙真の何気ない一言。空気を読まないそれに、あたしは吹き出してしまったのを覚えている。

「もう今年は旅館でよくね?なんか家に麗薇みたいな女子連れていったら騒がれるし。」

……あたしみたいな、とはどういうことなんだろうか。

今年は遙真の家に泊まる予定だったのに、野暮用ができたと言うので断念。

それで代わりに大河の所へとまることになったんだけど……。

「確かに、大河の家にはアノ人がいるからな。」

「アノ人ってなに?」

漣がしみじみと語る。そんな漣の様子もおかしくて、笑ってしまう。

「鈴木さん。大河の教育係になってた執事で恋愛ごとには人一倍うるさいんだよ」

だから、あたしが行ったら色々いわれる、ということだろう。

「じゃ、旅館にしよっか。あたし、行ったことないし。」

結局あたしの意見が肯定され、2泊3日の旅行となった。近くには、海があるのだとか……。わからないけど。

「……あたし、水着なんてもってないよ?」

そもそも、友達と海になんて行ったことないし。

琉たちといた時は琉が極端にうみを嫌ったから行かなかった。

……その理由にあたしが水着をみんなに見せるのがいや、ということもはいっていた
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