深紅の薔薇姫に愛を
「ふふふ。」

「なに笑ってんだよ!」

次は般若のような狂顔であたしの頭をヘッドブロック。

「痛いーいーたーいー!」

「仕方ねぇーからこの寛大な千紘様が許してやるよ」

あたしが、痛みを訴えるとすんなりはずしてくれて、オレサマ発言。

「……どうも、」

それから、あたしの頭をクシャッと撫でた。

「もー髪乱れちゃうよー」

あたしの発言はガン無視して、メットを被せてくる。

「行くぞ。振り落とされるなよ。」

風に乗って、徐々にスピードが上がっていく。

あたしは風が好き。

流されるままに、生きていけたら気持ちがいいだろうし。

「ねー、千紘。」

「あんだよ」

「千紘は……ううん。なんでもない。」

もし、これから渦に巻き込まれていくとしたら、千紘は……みんなは面倒くさがるのだろうか。

それとも、どこへでも付いてきてくれるのだろうか。

それから、無言の沈黙が続く。でも、それは別に辛くなくて幸せの余韻に浸るには十分だった。

どれぐらい走っただろうか。海の見える街にきて、海の本近くの旅館に着いた。

警察に見つからないように、結構時間を開けて走ったらしい。だから、あたしたちが一番乗りで、車組は最後。

バイクは旅館の人気のない裏に止めるらしく、そこに着ていた。

「ちょっと漣に電話してくる。」

細い路地に入っていく。電話の中身は聞かれたくないのか、あたしから遠ざかる。

「はーい」

あたしもスマホを開いた。

「あっれー?可愛いねー!俺たちと遊ばない?」

5人の不良ぽい人達が、あたしにナンパする。あたしにナンパするなんて、眼科をオススメするけど。

「あの、暇じゃないので。」

掴まれた腕を振りほどくようにすると、怒っていく。

「女っ!調子にのるなよ!」

あたしに向かって伸びてくる拳。あたしはそれを…。

「遅いのね。”あたし”のこと、なめてんの?」

1人目を瞬殺すると、怯えて逃げていく。

「お前、まさか……”薔薇姫”…?」

「しゃべんな。」

あたしはそいつの顔を踏みつけた。
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