深紅の薔薇姫に愛を
「ロビーで待ってろだとよ。」

「わかった。」

あたしたちは並んで歩き出す。

「そーいや、ずっと気になってたんだけど……」

「なんで麗薇って、俺と千鶴の違いわかるわけ?」

千紘と千鶴はそっくりの一卵性双生児。たまに漣たちも間違えているぐらいだし。

「なんか、わかっちゃうんだよね。」

和風の門をくぐると、日本庭園が見えてくる。石畳にそって歩くあたしはまるで少し小さい子。

「なんで?」

千紘と千鶴は違う。千紘の醸し出す雰囲気というか、オーラは千鶴とは似ても似つかない。

「うーん。顔みたらわかるから、理由なんてないんじゃない?」

入口からはいると、女将さんが暖かく歓迎してくれる。この旅館は大きくて三階建てのホテル並にはとまれると思う。

連れがあとから来るというとロビーに連れて行ってくれ、お茶を出してくれた。

「ぶっちゃけ、はじめてなんだよね。見分けられる人。」

「そーなんだ。」

あたしはお茶を1口のんだ。抹茶の旨みが広がっていく。

「昔、ひとり俺らのことちょっとだけ見分けられた人がいたんだけど……。
”ひとつしかないもの”を”ふたり”で取り合ったから、結局ふたりが傷ついた。」

双子は思うよりも大変なんだろう。特に見分けのつかないふたりは。

親も、まわりも見つけてくれない。自分をアピールするしかないから。
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