深紅の薔薇姫に愛を
意図的か、無意識か。

あたしと千紘をふたりきりにしたのにはきっと理由がある。

もっと奥に踏み込んでもいいのか。

知りたいと思うばかり、傷つきたくないとも思う。

踏み込みすぎて、もう戻れなくなるのが怖い。

一緒に誰か堕ちてくれないか。

あのとき、くじ引きに細工しておいたんだろう。ここにいるひとはみんな賢いからそんな小細工は思いつくだろう。

……あたしはこの中に踏み入れていい?

まだ、姫でもなんでもない。仲間でもない。あたしはただ、匿われる身。

あたしを狙うひとから、守ってくれるだけ。

なのにあたしが情が沸いてしまうなんて、。

遠くなった千紘たちの姿をぼんやりとみつめ、考えた。

彼らは元姫であるあたしを追い出そうとはしないのか。

下っ端くんたちは反乱因子も出る中、これでいいと思っているのか。

あたしがここに滞在することを、なにも思ってないのか。

ましてや、憧れや尊敬を向ける総長、漣斗の部屋。

なにも思わないはずがない。

「大丈夫か、麗薇」

慌てて背後をふりむくといつもどうりの漣の姿があった。


……相変わらず、カッコイイ。

いや、そんなこと考えている暇はない。海に行ったらさぞかし騒がれるのだろう。

東西南北それぞれの頂点にたつだけあって、人望と人気は底知れない。

女子からはもちろんのこと、男子からも受けまくる。

たまに、アッチの人もでてくるわけで。

「あー、うん。バイクだからちょっと疲れだけ。」

「そっか」

そうして、あたしが座っているソファに座る。しかも、あたしの隣。

「ん」

ん、といわれてもわかんないんだけど……
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