深紅の薔薇姫に愛を
side麗薇

あたしたちはまだ子供で、存在が弱くて小さい。ひとりで何もかもできる自立した人間なんていないから、あたしたちは誰かに、大人に頼って行かなきゃいけない。

手を伸ばして、それに応えてくれる人に。

暗い道も、照らしてくれる人に。

あたしも、出会いたかった…………。

「遙真は悪くない」

こんなことをいったら、ただの偽善者って思われるのかな。

だけど、あたしはそう心から思うよ。

遙真は悪くない。

彼女があんなことをしてしまったのが遙真に非があるとすれば、父親にも非があるし、母親にも非がある。

悪くないというと、遙真は少しだけ清々したような顔つきになった。

迷いが無くなったといえばいいのだろうか。

あたしと遙真が喋っているのを見つけた漣が不機嫌オーラを吹き出しながら近ずいてくる。

程よく焼けた肌、引き締まった筋肉、水が滴り落ちる黒髪。

それをかきあげる様子に、あたしはドキッとする。

「……遙真となに話してたんだよ」

ぶすっとした様子の漣。

こういうとき、感じる。あたしたちは恋人同士なんだと。

「遙真の過去を、聞いたの」

漣は面食らったような顔をする。

女嫌いの遙真が、自らあたしに過去を話したのだから。

きっと克服にむけて、漕ぎ出した。

「……そうか」

海に向いた体のせいで、彼の表情まではみえない。

「お前は、どう思う?……遙真の過去」

「……誰にでも過去はあって、今がある。”今”、過去を恨む必要はないし、遙真が責められなきゃ行けない理由なんてない。」

あたしにだって、漣にだって、千紘にだって、千鶴にだって、女好きと囁かれる大河にだって、過去がある。

それが、辛いか、幸せか。

それを、自分で乗り越えられるか。

……あたしはまだ乗り越えれない。

わからないけど……。あたしには、まだ解決しなきゃ……。乗り越えなきゃいけない何かがある。
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